蜜がいた

2005年1月15日 友達
「みんなにいい子でなくたっていいじゃん。」

蜜が言った。

聞き役か話し役か。

聞き役である。

話して欲しい。
何を考え、どんな気持ちでいるのか。
知りたい。
解りたい。

でも、いつのまにか
自分の気持ちを上手に吐き出せなくなっていて。

聞いている方が楽なようになってしまって。

消化しきれなくて、この日記を書き始めた。


今日はうつ病の彼氏と同棲中のあかねちゃんと
カラオケに行った。

あかねちゃんの話を聞くと、
新しい出会いがあってとても幸せそうだった。

帰り道、なつねえが心配になって電話した。

寄りを戻そうと電話があったらしいが
「先が不安」と泣いていた。

でも、なつねえと彼氏がまた一番近い場所に戻れた事が
素直に嬉しくて、少し安心した。


話しは飛ぶが、あたしには実家の他に
もうひとつ居場所がある。

ある部屋がある。

そこにはあの子との思い出が溢れていて、
別れた大晦日から行っていない。


なつねえとの電話を切って、
ふと部屋に忘れ物をしたことに気付いた。

何故思い出したのかはわからないけど。

あの子と別れてから、怖くて部屋には入れなくて。

密に話したら「落ち着いたら一緒に行こう」と
言ってくれてたのに、行ってしまった。


ドアを空けたら、夏の匂いがした。

あの子に出会ったあの日から
時が止まっていた。

廊下をすすんで、
扉を開けた。

開けた瞬間、来たことを後悔した。

あのままだった。

あたしが泣きじゃくった、
二人で笑い合った、
切なくなった、
嬉しくなった、
ドキドキした、
失いたくないのに「バイバイ」と言った

あの時のままだった。

あの子が置いていったもの。

それは物だけじゃなくて、
香りも風景も姿さえも
残していった。

ベットには枕が二つ並んでいて、
毛布は乱れ、ぬいぐるみが転がっていた。

ふうと何とか息をはいて、
ベットに座った。

ふっとあの子のニオイがした。

(もしかして・・・)

カーテンを少し開けてベランダを見た。

煙草を吸うあの子は居なかった。

ふいに泣きそうになったのを飲み込んで
忘れ物を取り、振り返らずに部屋を出た。

電気を消そうとスイッチを探したら
お風呂場のドアが開いていて、
あの子のハブラシが目に入った。

もう限界だった。

抱えきれなくなった。

壊れるんじゃないかと。


震える手で携帯を探した。

迷わず蜜にかけた。

呼び出し音を祈るような気持ちで聞いた。

早く出て。
早く出て。

「もしもし?」

いつもの優しい蜜の声。


「もしもし」

声になっていたのか
ならなかったか
瞬間、あたしは泣き出していた。

止まらなかった。

おぼつかない脳で必死で考え、
やっとの思いで現状を説明した。

蜜は冷静な声で

「早くそこを出て」

と言った。


すぐに蜜の家へ行った。

蜜の部屋に入った瞬間、
ボロボロ泣いた。

何分、何時間だろう。

自分の想いを話し続けた。

蜜は黙って、
時々笑って、
困って、
静かに頷いて、
聞いてくれた。

蜜の部屋はあったかくて
蜜もあったかくて
ここは天国じゃないかと
変な錯覚をしたりして。


この子に出会えて本当によかったと
出会えただけで生まれた価値があったと
そう思った。


「こんな自分ヤダ。」

「なんで?」

「友達の話しを、笑って聞いてあげれない。」

「みんなにいい子でなくたっていいじゃん。」

「え?」

「それが普通だよ。つらい時は笑えない。」

「そっか・・・。」

そんな当たり前の事もわからなかった。

あたしはいい子でいたかったんだ。

みんなに好きだと、必要だと思って欲しかったんだ。


でも、そんなんじゃない。
そんなんじゃないんだ。

どんなあたしでも
受け止めてくれる。

好きだと、必要だと
言ってくれる。

そんな子が欲しかったんだ。


こんなに近くにいたんだね。

蜜、ありがとう。

なんかもう、怖くない。

なんにも、怖くない気がする。

家族より、
あたしのことを知ってるなんて
やっぱり出会いってすごい。

ね。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索