最後のふたり

2005年1月4日 恋愛
深夜2時半。

最近猛アタックをかけてくるT君との電話中。

キャッチホン。

画面に映し出されるあの子。

「ごめん。また連絡する。」

すぐに切って電話にでた。

「もしもし」

「おお」

「藍人」

「うん。寝てた?」

「起きてた。」

「そっか」

あたしが

「藍人の気持ちが知りたい」と

メールしてから二日たっていた。

「なんでメールの返事くれなかったの?」

「なんて返していいかわかんなかった。」

「どう思ってるの?」

「わがままかもしれんけど、
 僕は自由で、いい加減で、こんな自分を変えれやん。」

「うん。」

「もし、やり直すとしても、僕はこのままやで。」

「うん。」

「それでもいいの?」

「うん。」

「え?」

「それでもいい。」

藍人はあからさまに驚いていた。
まさかあたしが頷くとは思っていなかったようだ。

「それでもいいよ。
 藍人と別れたくない。」

少しの間があって。

「僕は別れようと思ってた。
 気持ちはそう簡単に変えられやん。」

今度はあたしが驚いた。

(僕は変われないけど
 それでも付き合ってくれるの?)

と藍人は確認してるのだと思った。

違った。
あたしはバカだ。
早とちり。

(僕は変われないよ。
 だから別れたいってもう一回言って。)

そう言いたかったのだ。
彼は。

「そっか・・・。わかった・・・。
 あはは。もういいよ。」

「何それ。
 なんでそんなにあっさりなん。」

「あっさりじゃないよ。
 あたしは好きだけど藍人は無理なんでしょ?
 納得するしかないじゃん。」

「ちょっと待ってよ。
 落ち着いて。
 今からすごく自分勝手なこと言うけど
 黙って聞いて。」

「うん・・」

「僕はみつきちゃんとは付き合えない。 
 でも、今みたいに遊んだりしたい。」

「そんなの無理だよ」

「なんで?」

「だってそうじゃん。
 あたしは藍人が好きなんだよ?
 つらすぎるよ。」

「そっか・・・」

二人の想いが重ならない。
あんなに話してる事が
一緒に居る事が
幸せだったのに。

いつから
歯車は
狂い出していたのだろう。

「ねえ。藍人。」

「ん?」

「会えなくなってもね、一番に応援してる。
 大切な人だし、すごく好きだよ。」

「あんた、いい子やな」

もう藍人はみつきちゃんとは言わなかった。

「じゃあね。ばいばい。」

電話を切ろうとした。

「ちょっと待ってよ。」

「なに?」

「そんな言葉いらん。」

「え?」

「今から会いに行くわ。」

「え?」

「会って話そう。」

「・・・今日は無理。家、出れないよ」

「そっか・・・急やもんな・・・」

もうだめだ。
耐えられない。

涙が
こぼれた。

「もういいよ。」

「え?」

「ハッキリ言ってよ。」

「・・・」

「やり直せないんでしょ?
 なら仕方ないじゃん。
 あたしは友達にもなれない。
 でも、応援してるから。」

「ちょっと待ってって。
 とりあえず今日は保留にしよう」

「なんで?もう無理だよ」

「もう混乱しとるで、僕もどうしたらいいかわからん」

黙り込む二人。

藍人。
ずるいよ。
付き合って縛られたくない。
責任も取りたくない。
でも、都合のいい時は会いたいなんて。
残酷だよ。

「僕さ」

「うん」

「こうみえてさみしがりややしな」

「友達いっぱいいるやん」

「おらんよ」

「おるよ」

「深く話せるやつとかおらんし・・・」

早く。
ゲームオーバーになれ。
あたしが負けないうちに。

「とりあえず会って話そう。」

「いつ?」

「んー日曜の夜」

「だめ。明日。」

「明日?わかった。」

「・・・ねえあいと。」

「ん?」

「あたしね、あんまりあいとに電話しなかったでしょ?」

「そうやっけ?」

「うん。メールばっかだった。それはね
 怖かったんだ。忙しいって言われるのが。
 重荷になりたくなかった。」

「・・・」

「でも、こうなるんだったら
 もっと電話しとけばよかったな・・・」

「そんな思い出話いらん・・・」

「いらんことないよ」

「とにかく会ってはなそ」

「わかった。明日ね。」

「おやすみ」

「おやすみ」

電話は切れた。

なぜだろう。
全身が震えていた。
動悸が激しくて、吐き気がする。

考えた。
脳が擦り切れるくらい。

結果。
あたしは藍人と友達になろうと思った。

何も求めない、都合のいい、
触れ合えない友達に。

そして今日の朝、
「8時に」とメールした。

やっぱり返事はなかった。

そして約束の一時間前。

電話が鳴る。

(藍人だ)

嫌な予感がした。

「今日僕さ、無理やわ。」

「そっか。わかった。」

「うん。」

「ばいばい。」

「ばいばい。」

それだけ。

ごめんも。

何もなかった。

何も。
何も。
残らなかった。

大声あげて泣いてやろうかと
友達に電話して思いきり悪口を言おうかと
そう思ったけど。

ただ。

かわいそうな子だと思った。

人の気持ちを
軽くしか扱えない
可哀想な子だと。

あたしはようやく解放されたんだ。

あの子がかけた魔法から。

あの子は強力な魔法をかけていた。

その魔法は解こうとすると
途端に涙が溢れだし、
苦しいほどの孤独感に襲われるしくみになっていて。

解くのが怖くて仕方なかった。

でも、もう大丈夫。

孤独だけど。

寂しいけど。

もう、大丈夫。

キミが、そんな子だったなんて。

怒りを飛び越えて
哀しいよ。

ばいばい。

ほんとに。

ばいばい。

あいと。

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